櫻庭 栞の しおりん❜s畑

昭和レトロな『櫻庭』と、ダメダメ『く~すけ』の雑記・写真などが入ったブログです…。

ヤマユリの思い出

小さい頃。
よく父と一緒に、六甲山系のハイキングコースを歩いたものです。
山の中では、いつも父の背中を、追って歩きました。

梅雨が明ける前。天気が『くだり坂』で
『霧』が、白くたちこめ始めると
父は、後ろに手を伸ばし、手をつなぐよう
うながします…。

   『山道』は、狭く。並んでは、歩けません。
   こうなると山の中。ますます父だけが、頼りです。

そんな時…
どこからか『いい匂い』が、してきて、私は、立ち止まりました。

「いい匂いが、する…!」
「ああ。近くに『ヤマユリ』が、咲いているのだろう。」

「え。ユリ! どこ…? 見たい!」
「ハハハ。この『茂み』の、奥だよ。お前には、見つけられないよ。
 このあたりの、どこかの木の陰に、ひっそりと咲いているんだよ…。」
 と、父。

    私が、いくらあたりを見渡しても『霧』とか『笹』とかのせいで
    見つけられません。


「さあ。行くぞ。雨が、降って来るぞ。」
と、父は言って、また手をつなぐように、差し出します。
「うん。」

私の腰のあたりまである、草ぼうぼうの山の道は
どんどん視界が、白く。もやが、かかるようになってきています。

   湿気を含んだ草木の匂い、土の匂いの中に
   ここのわずかな空間だけ、姿の見えない『ヤマユリ』の
   かぐわしい匂いだけが、たちこめていました。

まわりの空気は、どんどん『湿り気』を、含んで
重たくなり…。
草と土の匂いも、水分をたくさん含んで、ますます匂いが
強くなり…。
雨の気配も、強くなってきています。


  やはり…
    真っ白な山道を、しばらく歩くと
      『雨の粒』が、落ちてきました……。


                    
                   お読みいただきありがとうございました。
                           end.